「コンタクトレンズにご注意!!」 宇津見眼科医院 宇津見義一 |
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1.はじめに
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現在、コンタクトレンズ(以下CLと略す)装用者は1,600万人ともいわれている。しかし、CL眼障害はあとを絶たず、若年者の眼障害も増加している。日本眼科医会が調査したCL眼障害は、平成13年3月までの1年間に全国に68,045件である。これはCL装用者の8〜10%に眼障害を生じていることが推定される。また、横浜市眼科医会が調査した横浜市夜間急病センター眼科の1施設で、平成12年9月までの1年間に262例、483眼のCL眼障害があった。 さらに日本眼科医会は全国の中・高校生83,693名を調査した。CL装用割合は、中学生4.6%、高校生21.9%。その中でCL使用による何らかの眼異常体験者は、中学生57.7%、高校生67.8%であるにもかかわらず、CLの定期検査を定期的に受けていない生徒は中学生60.3%、高校生70.9%であった。つまりCLによる異常があっても眼科医の定期検査を60〜70%は受けていないと思われる。 以上はCLに関する認識の低さを示している。背景には多種類のコンタクトレンズが販売され、レンズの選び方、装用方法そして定期検査等の必要性につき十分な説明がされていない。 今回、CL眼障害を防ぐためにCLの眼に対する影響やその選び方等などCLの基本的問題につき述べる。 |
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2.コンタクトレンズの適応、不適応
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眼鏡はスポーツの時にずれやすい、近視や遠視の度数が強い場合は眼鏡のレンズが厚く重くなる、円錐角膜なの角膜不正乱視では眼鏡では矯正が不十分である、左右の度数の差が大きい場合に眼鏡では像の大きさの異なり不等像にて装用できないなど眼鏡の欠点をCLにより改善される。初めてCLを使用する方はおしゃれ目的であることが多い。しかし、CLは目にとっては異物であり誤った使用は眼障害の発生を助長する。そのため装用方法、レンズケアそして定期検査をしないなどいい加減な性格の方、ドライアイや結膜炎など眼疾患のある方は眼鏡の使用をすすめる。 |
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3.コンタクトレンズによる眼障害の原因
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眼球の最先端角膜は血管のない角膜は透明で血管のない組織のため、大気中から涙液中に溶け込んでいる酸素により呼吸している。そのため、CL装用にて角膜は酸素不足となる。その結果 、角膜炎などのトラブルを起すことがあるため注意が必要である。CLによる眼障害の主な原因は角膜の酸素不足、物理的障害、感染、レンズの汚れ、アレルギーそして眼の乾燥である(表1)。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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4.CL眼障害
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CLの眼障害の最も危険な合併症は角膜感染症である。角膜上皮障害が進展すると角膜潰瘍(写 真1)となり永久的な視力障害を生じる可能性がある。また、レンズの汚れに対するアレルギー性結膜炎や巨大乳頭結膜炎(写 真2)がソフトコンタクトレンズでは生じやすくなる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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5.CLの種類
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CLには、硬くて角膜より小さいハードコンタクトレンズと、柔らかくて角膜より大きいソフトコンタクトレンズがある(表2)。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1)ハードコンタクトレンズ ハードコンタクトレンズ(以下HCLと略す)は、異物感があり、初めての人には慣れるまで時間がかかるが軽度の乱視矯正効果 がある。HCLは水を含まないが、酸素を通さないものと、酸素透過性HCLがある。現在、酸素を通 さないHCLはほとんど使われなくなった。これに対し、酸素透過性HCLは素材が酸素を通 すことと涙液交換によりSCLより角膜に十分な酸素が供給される。このタイプのレンズは、酸素透過性の低いものから高いものまで種類は多い。もちろん酸素透過性の高いレンズの方が安全性は高いと言えるが、酸素透過性が高くなると「もろい」「汚れやすい」といった欠点もあり、必ずしも酸素透過性が一番高いものが一番良いレンズとは限らない。 2)ソフトコンタクトレンズ ソフトコンタクトレンズ(以下SCLと略す)は、異物感がほとんどなく初めての人でもすぐに慣れるが、乱視矯正効果 はHCLより少ない。スポーツをする人などには好んで使われる。SCLは素材によって含水率が異なる。含水率とは、簡単に言えばそのレンズに含まれる水の量 である。含水率が高ければ水分量が多く、酸素はこの水に溶け込むので、含水率が高いほど酸素がおおく含まれている。含水率は38〜78%とレンズ種類によって異なる。角膜に酸素を送る点から考えると含水率の高いSCLのほうが、安全性が高いと言える。従来型レンズは低含水率が主流であったが、最近の傾向としては使い捨てレンズなど比較的含水率の高いレンズが多く使われている。 |
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(1)SCLの種類 最近のSCLは使用方法が多様化している。長期使用する「従来型レンズ」と、「2週間交換」や「定期交換レンズ」など一定期間使用するレンズや、1日または1週間装用する「使い捨てレンズ」などがある(表3)。1日使い捨て、2週間交換、連続装用使い捨てレンズは3ヶ月ごとの眼科専門医による定期検査を受けなければレンズの処方ができない。欧米では使い捨てレンズによる眼合併症が多く生じている。日本でも1日使い捨て、2週間交換、連続装用使い捨てレンズによる眼障害が急増している。レンズは早くすてるから安全であるのに、装用者の中には安全なレンズであるから、ケアもせずに長期使用するという間違った使い方をするものも少なくないため注意を要す。 |
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1.「従来型レンズ」 下着は毎日洗濯しても黄ばみや汚れが付くように、「従来型レンズ」は長い間使用するためレンズも変性し、汚れが蓄積する。使用期間は1〜2年間であるが、短いほどよい。多少レンズが汚れていても「もう少し使える」「まだ大丈夫」と自己判断して無理に使い続け、眼に障害が起こることも少なくない。 2. 「1日使い捨てレンズ」 1日使い捨てレンズは毎日新しいレンズを使用するので衛生的であり、ドライアイやアレルギー性結膜炎でも従来型レンズより安全に使用できる。汚れがつく前に捨てケアも不要なため、SCLの中では最も安全に使用できる。しかし、費用がかかるのが難点である。 3. 「2週間交換レンズ」 2週間交換レンズは頻回交換レンズともいい、一枚のレンズを今まで通りに使用して2週間後に新しいレンズと取り換えるもので、毎日のこすり洗いと洗浄、消毒は必ず行う。このタイプは酸素の供給が比較的高いうえ、汚れが固着する前に新しいレンズと交換するため、汚れによるトラブルの発生が少なくなる。しかし、安全なレンズだからと装用時間、装用期間やケアを怠るために障害が増えている。費用は従来のレンズと変わらない。 4. 「定期交換レンズ」 4週間、1カ月、3カ月そして6カ月と使用期間がレンズによって異なっており、一定期間使用後に新しいレンズと交換する。従来型レンズよりは早期に交換するためよいが、使用期間に注意が必要。従来型の素材を使用している場合が多い。 5. 「連続装用使い捨てレンズ」 連続して1週間装用して捨てるレンズである。連続装用は就寝時も装用するため角膜への負担が多く、安全とは言えない。就寝時、角膜への酸素供給量 は開眼時の33%に減る。さらにCLを装用し寝ると、さらに減少する。連続装用は、酸素不足から眼に障害が生じやすいため避けるべきである。 |
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3)特殊コンタクトレンズ (1)カラーレンズ (2)乱視矯正用レンズ (3)老視用レンズ (4)円錐角膜用レンズ (5)非含水性レンズ |
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6.レンズのケア
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CLは蛋白質、脂質、微生物そしてカビなどがレンズに付着する。1日使用したレンズは汚れており、レンズのケアを怠ると汚れにより酸素透過性は低下し、細菌感染やアレルギー性結膜炎や巨大乳頭結膜炎を生じやすくなる(写 真2)。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1)洗浄 手指の汚れをレンズに付けないように洗浄前には必ず手指の洗浄を行ってから洗浄を行う。最近、こすり洗い不要という宣伝をしてCLのケア用品が売られている。その結果 CLの汚れによる眼障害が急増している。汚れの中には感染を起す多くの微生物が見られる。こすり洗いをしなければ汚れは落ちにくい。(表4)。こすり洗いは洗浄に効果 的です。洗浄液、洗浄保存液、保存液そしてMPS(マルチパーパスソルーション:1液で洗浄、保存、消毒ができる薬剤)などでこすり洗いを行います。また、つけおき洗浄には各種薬剤によるものがあるが、十分に汚れを取ることができないためこすり洗いを必ず併用すること。 こすり洗いは手のひらにCLをのせ、人指し指で片面30回以上こすり洗いする。強くこすりすぎるとHCLは割れることがあり、SCLは破れやすいので注意して行う。 2)消毒 消毒はCLに付着した微生物を消滅させ感染を防ぐために大切である。消毒だけでは汚れは除去できないので、洗浄により汚れを除去した後に消毒をする。 酸素透過性HCLの保存液は消毒作用もあるため保存時にも消毒効果がある。SCLは保存液を吸収するため保存液の成分に消毒薬剤は含まれていないため保存時に消毒効果 がない。そのため洗浄とこすり洗いも大切であるが、消毒も入念に行う必要がある。SCLの消毒は、加熱処理する煮沸消毒とMPSや過酸化水素による化学消毒がある。煮沸消毒ではレンズのこすり洗いと洗浄をしないで煮沸すると、レンズ表面 に付着していた蛋白質が熱変性し付着し、レンズの白濁、変形がおきアレルギ-等の問題が生じてしまう。化学消毒はこうした汚れ成分が熱変性することなく汚れも除去しやすいと考えられているが、消毒効果 は煮沸消毒より劣る。化学消毒剤でもこすり洗いは必要である。 3)すすぎと保存液 近年、重篤な角膜感染症を引き起こすアカントアメーバという微生物が井戸水、水道水そして自家製保存液に存在することが知られている。そのためすすぎと保存液にはこれらを用いないこと。CL用の消毒剤はアカントアメーバへの消毒効果 は少ない。すすぎと保存液は必ず指定されたものを使用すること。 4)レンズケースの管理 レンズケースは汚染されるため、定期的な交換と毎日の洗浄と乾燥が必要である。
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7.ドライアイとCL装用
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ドライアイは、CLを装用すると角膜障害を生じやすいので眼鏡をするよう指導する。どうしてもCLを使いたいという方には、酸素透過性HCLか毎日使い捨てSCLか2週間交換SCLを使用し、ドライアイ用の人工涙液(防腐剤が含まれていない点眼薬)を頻繁に点眼しながら装用時間を抑えるように使用すべきである。 コンピューターの画面以外にも、テレビゲームに夢中な時や、勉強に集中している時も瞬目回数は少なくなり、目は乾燥しやすくなる(表5)。 |
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8.定期検査
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CL装用中「目が充血する」「目の痛み」「ゴロゴロする」「目がかすむ」「かゆみがある」「めやにが出る」等の症状を感じたらすぐに眼科を受診すること。これらの眼症状が出たら、CLをはずすことが大切である。
しかし、自覚症状がなくてもレンズにキズや汚れが生じていたり、レンズの度数やカーブが不適切であったり、角膜や結膜に病気が発生していることが少なくない。CLをつくる時は、必ず眼科専門医での処方、装用指導を受ける。また、自覚症状がなくとも定期検査により異常が早期に発見されることが多くあるため、眼科専門医の定期検査は3カ月に1回は受ける。 |
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9.さいごに
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安全にCLを使用するためには、下記のことを必ず守ることが大切です。 1)どんなコンタクトレンズでも目には異物であり負担がかかるものです。 2)レンズを選ぶ時、HCLでは酸素透過性ハードコンタクトレンズを、SCLでは2週間交換型か毎日使い捨てSCLを選びたい。 3)使用時間は12時間以内にする。装用時間は短いほど目に負担は少ない。 4)不快感がある場合にはすぐにはずす。 5)レンズの洗浄、こすり洗いと消毒はきちんとする。 6)眼科専門医の定期検査を受ける。 7)自宅では眼鏡を使用し、外出時も持ち歩く。 8)何か異常を感じたらすぐに取り外す。 |